不動産売却の豆知識
不動産売買の思わぬ体験事例集「地中埋設物が専門的すぎて・・・」
地盤調査
不動産のお仕事をしていると思いもよらぬ場面に出くわすことがあります。
・契約に出向いてみたら売主様と買主様が同級生だったこと
・事前審査を行ったら旦那様の借入が判明し離婚に発展してしまったこと
・建物解体更地をしたら地中から防空壕が出てきたこと
・「タンス預金で家を買う」と買主様が3000万円を現ナマで持ってきたこと
いや~、いろいろとあります。笑
そんななかで本日お話するのは、地中埋設物のお話。
地中は目で見えないため、調査を行うまでどうなっているのか分からないんですよね!
今後も続く不動産人生でも、もう出会わないであろう経験です。
地中埋設物について
地中に埋設しているものを地中埋設物と言いいます。そのままですね。笑
この地中埋設物は建物を建築する際に注意しなければいけません。
たとえば、地中に以前建っていた建物の基礎が残っていたり、たくさんのコンクリートゴミが捨てられていた場合は、それらを撤去しないと新たな建物の基礎を建築できません。
場合によっては何百万円単位で撤去処分費がかかることもあるので、土地取引では慎重になる部分です。
この地中埋設物として、ちょっと扱いが分からないモノが出てきたことがあります。
今日はそんな体験談です。
地中埋設物が専門的すぎて・・・
製鉄所
高炉滓(こうろさい)って、ご存知でしょうか?
知らないですよね。僕も初耳でした。
この高炉滓が地中から出てきました!
・・・・さて。困りましたね~。
取扱いが分かりません!というか、高炉滓が分かりません。笑
高炉滓について教えていただいたところ、「製鉄の際に分離された不要成分」だそうです。つまり、製鉄の際に生じるゴミです!
そういえば、近くに新日本製鉄や大同特殊鋼などの大きな製鉄会社がある地域でした。
建築に支障があるのか
売主様に聞いてみても、そんなゴミが捨てられていたなんて夢にも思っていません。
相続で得た土地で、昔から畑として利用をしていたようでした。
問題は「建築が出来るのか」ということです。
幸いにも、買主様が建売を主とする大手建築会社さんでしたので、協力をしていただき、成分の調査や建築への支障を調べました。
結果は建築には支障がないとのこと。
大ハッピーです!笑
「製鉄時のゴミが、まさか支障がないなんて!」というのが当時の素直な心境です。
しかしながら、ここで買主様からまさかの購入見送り宣言が・・・・
本社の稟議が下りないとのこと・・・
全国規模の大手建売会社でしたので、本社の指示が絶対ですので仕方ありません。
土地の行き先は
結果的に当時僕が勤めていた会社が買取ることになったのですが、そこに至るまで色々と模索しました。
社内でも「建築に支障がなければ買取OK」派と「リスクをとるべきでない」派と別れましたからね~。
処分をしてもらえないかと新日本製鉄や大同特殊鋼にお願いしに行ったこともありました。笑
当然ながら自分たちが捨てたわけじゃない。ということで応じてもらえません。
しかしながら、幸いなことに新日本製鉄さんが高炉滓の成分調査や資料、他物質へ与える影響などを書面で教えてくださいました。
おかげさまでお客様へ安心してご紹介できる書面が手に入りました。
お客様の反応
結果的に自社で買取って、建売住宅を販売したわけですが、お客様に高炉滓の説明なしに販売するわけにはいきません。
どんな反応をされるのかな~と心配でしたが、なんのその!
新日本製鉄さんの資料のおかげもあり、ほとんどのお客様が安心してご購入いただけました。
5区画の建売住宅で完成前に2区画が販売できましたので、むしろ好調だったくらいです。笑
さいごに
今後はもう経験しないであろうと思うような、専門的な地中埋設物でした。
結果的に売主様にも当時の会社にも納得いただける形でおさまりましたが、当時は毎日この物件のことばかりで東奔西走しておりました。
まさか住宅街にある畑に、製鉄時のゴミが埋まっているなんて誰が想像できますか!
畑だって普通に野菜が育っていたようですし。
この経験から地中は調査するまで全く安心できないことを痛感しました。