不動産購入の豆知識
《静岡市の20代社長が送る購入失敗事例》④がけ条例
擁壁の上にたつ建物
がけ条例ってご存知ですか?
一般の方は、ほぼご存知ないと思いますし、住宅購入を検討中で土地探しなどをしている方でも初耳かもしれません。
ちなみに、僕自身も3人ほど静岡市の不動産業従事者さんで「がけ条例」を知らない方にお会いしたことがあります。笑
お気づきの方もいらっしゃるかと思いますが、がけ条例という【条例】なんです。なので、各都道府県が制定しており、宅建の免許試験には出ませんし、重要事項説明書や契約書のテンプレート(宅建協会等が会員に提供している)にも記載がありません。
確認はしていないですが、全国で制定されている条例だと伺ったことがあります。確かなことは、愛知県・静岡県・福岡県には間違いなく条例としてあります!!ただし、それぞれの県によって、細かい内容は異なります。
そんな条例のことを知らない不動産業界歴4カ月だった私は、お客様と建築会社に費用を捻出させるという、ご迷惑をおかけしてしまいました。
擁壁築造費用をなんとか捻出
弊社が売主様からお預かりしていた売土地のお問い合わせをいただいたお客さまでした。
お問い合わせいただいた物件は予算面から見送りになりましたが、別のお土地をご紹介したところ、気に入っていただき、ご契約となりました。
ご契約に向け書類の作成などの準備を進めていると、お客様が建築予定のハウスメーカーから電話がありました。内容は「がけ条例」に関わることで、確認済証or工作物の設置届の有無に関して(後ほど説明します)。当時の私には意味不明で、上司に確認して「がけ条例」の制限がかかることを理解しました。
その後の調査で、がけ条例の制限により、一部敷地内の擁壁を作り替える必要が出てしまうことが判明しました。弊社の仲介手数料の一部・ハウスメーカーの一部費用負担・お客様の可能な金額の予算増により、なんとか契約を前に進めることになりましたが、多大なご迷惑をおかけしてしまいました。
がけ条例ってなんなのさ
※ここでの説明は静岡県建築基準条例第10条のがけ条例を参考にしています。簡潔に説明するため分かりやすく、ざっくりです!
敷地ががけに面していて、がけの高さが(2m)を超えるがけの上または下に建物を建築する場合、「がけ条例」の制限を受けます。ここで言う「がけ」とは、下端から上端までの角度が30度以上のものを言います。
受ける制限は【がけの端(建築場所ががけの下なら上端から、がけの上なら下端から)から、がけの高さの2倍の距離を取らないと建物の建築は許可されない】です。つまり高低差3mのがけがあったら、がけから6m以上はなれないと建物の建築は許可されません。
この制限を受けなくする方法が2つあります。①がけに堅固な擁壁をつくり、安全を確保する。②万が一のがけ崩れに対応できるよう建物の構造を鉄筋コンクリート造などにする。です。
これが、がけ条例です。良く分からないと思うので、下図を参考にしてください。
がけ条例
鉄筋コンクリート造の家を建てる方は稀で、実務では2m以上の高低差がある敷地では擁壁を重要視します。
では問題です。がけ条例の制限を受けなくする方法の①で、誰が堅固な擁壁と判断すれば良いのでしょうか??
・・・・・・正解は、一級建築士です。一級建築士さんが堅固ですよ~と認めて、印を押してくれればOKです。ただし、その擁壁に万が一が起こった場合、一級建築士免許ははく奪されます。笑 厳しいですが、命にかかわる箇所なので、それだけ厳しくなって当然です。それほどの責任を負って、一級建築士さんは判断します。
そこで、先ほどの確認済証or工作物の設置届が絡んできます。その2つの書類は「擁壁の築造時に役所が擁壁の確認をしましたよ」という証明になります。役所は擁壁の強度を確認してから証明を出しますので、この2つの書類どちらかがあれば、擁壁築造時に役所が求める堅固の基準はクリアしていましたよ~と言えます。
したがって、一級建築士も堅固性を認めやすくなります(築年数や排水にもよる)し、万が一の際の弁護要素にもなります。
ちなみに、ここ10年くらいの擁壁であれば、確認済証がある可能性がかなり高いので、安心してください◎役所に行けば確認できます。
高低差2m以上は注意
欲しい!!と思った土地の敷地に、もしくは隣地に、2m以上の高低差はありませんか?
擁壁はありますか?堅固そうですか?新しい擁壁ですか?確認済証はありますか?
契約をする前に必ず確認をしてください。不動産屋に聞けばおおよその場合、しっかりと答えてくれるはずです。
少し余談で、大声で話せない内容ですが、
万が一、相続した土地ががけ条例に該当するよ~泣!!って方は、もし市街化区域内であれば、がけ条例を完璧クリアできなくとも建物を建築できる可能性もあります。
市街化区域は基本的に建物の建築を認めてくれるので、がけ高さの倍離れなくても建築できる場合もありますし、確認済証がない擁壁でも、許可をしてくれる場合もあります。
各市役所の建築課へご相談してみてください。実際に僕も、そういった案件を扱って、がけから2mだけ離して一般木造住宅を建築させてもらった経験もあります。